失敗しない民泊の始め方ガイド|開業手順や注意点、必要な手続き・費用について解説

失敗しない民泊の始め方ガイド|
開業手順や注意点、必要な手続き・費用について解説

手ごろな宿泊施設として需要の高い民泊、開業したいけれど始め方が分からない、という場合も少なくないでしょう。
本記事では、民泊に適した物件探しから運営開始までを詳しく解説します。

民泊とは?

ビジネスとして確立される以前は、単純に民家へ宿泊することを「民泊」と呼んでいました。
しかし、仲介サイト「Airbnb」の登場でその意味に変化が生じました。2008年にアメリカで立ち上げられた同サイトは、宿泊場所を探すゲストと所有している物件を有効活用したいゲストをマッチングする仕組みを確立。それまでの民泊は、善意と無報酬が前提となっているボランティアのような行為を指す言葉でしたが、「宿泊ビジネスを指す用語」という側面も持つようになりました。
日本にも2014年にこの仕組みが上陸し、投資用のマンションや個人宅の新たな活用方法として注目を集めます。国内の民泊ニーズが特に高まったのが、訪日外国人観光客です。もともと高かったインバウンド需要、有名観光地や都市圏を味わい尽した訪日外国人観光客が次なる目的地に選んだのが地方でした。リーズナブル、かつ地域性のある生活を体験できる民泊が、訪日外国人観光客の多様化したニーズの受け皿となっています。

民泊の種類

民泊の種類

業態によって変わる民泊の種類を3つご紹介します。 民泊運営の根幹とも言えるルールなので、それぞれについて正確な理解を深めましょう。

住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、保健所への届出のみで開業ができる業態です。
民泊の始め方を熟知していない場合でも、シンプルな手続きなので、営業へ踏み切れる比較的ハードルの低い方法と言えるでしょう。
しかしながら新規参入がしやすい反面、年間の営業日数が180日未満という制限が設けられています。
通年稼働させて本業のように収益を出すというよりは、限定的な営業で副業として収益の足しにするのが向いている業態です。
お手軽な方法に見えますが、緊急時に対応できる体制の整備や消防設備は欠かせないので、準備を怠らないようにしましょう。

旅館業法による民泊

旅館業法に準ずる民泊は簡易宿所としてサービスを提供します。
法律上、ホテルのような宿泊施設と同じ扱いのため、営業日数に限りはありません。
営業日数に制限がなければ、民泊経営の年収も変わってきますよね。
一方で、住宅宿泊事業法に則る場合以上に非常用設備や消防設備を整える必要があり、新たな費用が発生する可能性があります。
加えて、民泊を構える場所にもルールが設けられており、教育施設周辺での営業はできません。
民泊への活用を考えている不動産の近くに教育施設がある場合、その時点で選択肢から外れてしまいます。
ただし要件には地域差があるので、実際に費用を投じる前に自治体や管轄機関などで確認しましょう。
クリアするべき条件は多いですが、営業を始められれば、売上の見込みが高い方法の一つです。

国家戦略特区法による民泊(特区民泊)

国家戦略特区法に基づいて民泊を運営する場合は、指定された地域に施設を構えなければなりません。
しかしながら、旅館業法と同様に365日の営業が認められているのに加え、スタッフの常駐義務がないのが利点です。
加えて、建築基準法上の用途変更が求められないため、住宅のまま営業可能。
そのため初期費用が抑えられる場合があります。
欠点としては、ゲストの最低滞在日数にルールが設けられていること。
ゲストに2泊3日以上は滞在してもらう必要があり、予約の獲得にハードルがあります。
ただ、客層によっては連泊が主流になるケースも考えられるので、デメリットとして考慮する必要がないこともあるでしょう。
誰もが選択できる方法ではないものの、条件が合えば第一候補になり得ます。

営業スタイルによる民泊の違い

営業スタイルによる民泊の違いを解説します。
それぞれの特徴を理解し、どちらのスタイルを採用するか考えてみましょう。

家主居住型

家主居住型は、民泊として提供する建物に家主が居住しているパターンです。
普段は滞在していなくても、在客中に滞在ができれば、この形式でサービスを提供できます。
席を外すことも可能ですが、原則1~2時間までと定められているため、施設を離れる際は注意しましょう。

家主不在型

家主不在型は、家主が不在でも宿泊先として営業できる民泊を意味します。
ただ、家主不在が許されていても無条件ではなく、在客時の対応を住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。
所有しているマンションや空き家を民泊として活用する場合は、必然的にこちらで準備を進める運びになるでしょう。

民泊の始め方・開業手順

次に民泊の始め方・開業手順をご紹介します。
実際に開業する際の参考にしてください。

形態にあった許可申請・届出を行う

先述した民泊の種類から、どの形態での開業を目指すか決めましょう。
採用する方式によって、申請先が異なります。
申請が適切に済んでいないと違法営業になる恐れもあるので、無用なトラブルを生まないよう、確実に完了させてください。

住宅宿泊事業法(民泊新法)

住宅宿泊事業法(民泊新法)に従って民泊を開業する際の届け出は、ポータルサイトか保健所で行えます。
下記のような書類が必要になります。

  • 届出書
  • 転貸承諾書
  • 住宅の図面
  • 欠格事由に該当しない事の誓約書

届出書はポータルサイトで取得可能ですが、そのほかの書類は事前にご自身で用意しなければなりません。
また保健所へ届出を行う場合は、自治体ごとに担当部署が設けられているため、同ポータルサイトで確認しておきましょう。

 

旅館業法

旅館業法に則って民泊を始める場合は「開発審査課」と「建築指導課」によるチェックに合格したうえで、保健所に申請をします。
下記のような書類が必要になります。

  • 登記事項証明書
  • 配置図・平面図
  • 状況見取り図
  • 仕様承諾書
  • 構造設備の仕様図
  • 検査済証
  • 水質調査成績書
  • 土地・建物登記簿謄本

住宅宿泊事業法の場合とは異なり、複数箇所での手続きを必要とするため、スケジュールには余裕を持たせましょう。

国家戦略特区法

国家戦略特区法に基づいて民泊を開業する際、保健所の許可は必要ありません。
代わりに自治体ごとに設置されている窓口での認定申請を求められます。
個人と法人で必要書類に一部違いがありますが、主なものは下記の通りです。

■個人

  • 申請書
  • 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款
  • 住民票の写し
  • 施設の構造設備を明らかにする図面

■法人

  • 申請書
  • 定款または寄附行為及び登記事項証明書
  • 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款
  • 施設の構造設備を明らかにする図面

身元を明示する書類が変わるだけで、大きな差はありません。
窓口に相談する前に、揃えられるものは準備しておきましょう。

リフォーム・リノベーションを行う

民泊の開業に当たっては、リフォーム・リノベーションの実施をおすすめします。
確かに許可申請・届出に支障がなければ、これらを行う必要はありません。
しかしながら、長期的な目線で集客の安定化を考えるのであれば、開業に併せたリフォーム・リノベーションは前向きに検討すべきでしょう。
顧客満足度に大きく影響する水回りをキレイにしたり、各媒体への写真掲載を見越して外観や内装にこだわったり、選択肢はさまざまです。
宿泊客に快適な滞在時間を提供できる民泊を目指してください。

設備・備品を用意する

設備・備品による細やかな環境整備も欠かせません。
宿泊客が快適に過ごせるのはもちろん、滞在中の安全を確保するのも管理者の責任です。
各種アメニティや消防設備など、民泊の運営に必須なものから揃えていきましょう。
前提条件となるものが整ったら、予算と相談のうえ、どのように付加価値をつけるか考えてみてください。
快適さと安全性は当たり前とされるため、それらだけでは集客に結びつきません。
インテリアに統一感を持たせて雰囲気のある空間に仕上げたり、アメニティにご当地のものを取り入れたり、競合他社との差別化を図りましょう。
こだわると無尽蔵に費用が膨らむので、収支とのバランスを念頭に置くことも大切です。

料金や規約の設定

宿泊客を迎えられる施設に整ったら、料金や規約の設定に取りかかりましょう。
閑散期は料金を下げて稼働率上昇を促進、繁忙期は料金を上げて宿泊客単価の向上を目指すことが価格設定の基本です。
民泊周辺のイベント情報も考慮すれば、より繊細な料金コントロールができるかもしれません。
近隣の競合他社の料金も参考にして、適切な価格設定を心がけましょう。
またトラブル防止の観点から、規約の明確な設定は欠かせません。
近所に迷惑がかかるような事態になれば、民泊の存続も危ぶまれます。
チェックイン・チェックアウトの時刻から禁止事項に至るまで、ささいなことも規約として明示しましょう。
近隣との友好関係は、宿泊客の協力なしには構築できません。

民泊サイトに登録する・集客を行う

集客の開始に伴い、民泊を仲介してくれるサイトへ登録するのもおすすめです。
冒頭で触れたAirbnbをはじめ、楽天トラベルやじゃらんなど、集客に役立つサイトの種類は豊富です。
集客の効率を求めるのであれば、1~3サイトを併用するのがよいでしょう。
月額料金のかからないサービスが多いため、実際に運用しながらメインで使用する集客サイトを選んでみてください。
また、開業直後は施設が最もキレイな状態です。
これらの集客サイトに掲載する写真を撮影しておきましょう。
経費削減を考慮してご自身で撮影するのもよいですが、プロのカメラマンへの依頼も積極的に検討してみてください。
Webサイトページの魅力を高め、集客を促進しましょう。

民泊開業にかかる費用はいくら?

民泊開業に必要な費用の相場は、数十万円~一千万円程度です。
物件を新たに購入するのか、すでに所有している物件をリフォームするのか、で費用は大きく変わります。
所有している資産や民泊を構える地域など、ご自身の状況に合わせてシミュレーションをしてください。
また開業資金とは別に、数ヵ月分の運用資金も確保しておきましょう。
なぜならオープン直後は集客が安定せず、赤字が続く可能性もあります。
収益が安定するまでの間、耐えられるだけの資金を用意できていれば安心です。
自治体によっては、民泊の開業に補助金を出しているケースもあるので、併せて確認しておきましょう。

民泊開業のポイントと注意点

民泊開業のポイントと注意点

民泊開業のポイントと注意点を五つ解説します。

ターゲット・コンセプトを明確にする

開業する民泊のコンセプトや、宿泊してもらいたいターゲットを明確にしましょう。
これらは、営業形態を選択する初期段階で固まっているのが理想です。
民泊のコンセプトが異なれば、揃える設備や備品にも違いが生まれますよね。
またターゲットが異なれば、望ましい立地条件も変わってくるでしょう。
費用が発生している段階での方向転換は、不要な経費を生み出しかねません。
準備のスタート時点でターゲット・コンセプトを定め、一貫性のある開業準備を進めれば、競合と差別化されたターゲットへ響く民泊に仕上がるでしょう。

立地・物件にこだわる

民泊の開業において最も慎重になるべきは、立地・物件の選定です。
宿泊業は特に立地の影響を受けやすく、施設へのアクセスのよさや周辺エリアの利便性が客足を大きく左右します。
例えば、民泊から望む田舎風景が美しくても、ビジネスとして成功する確率はアクセスの良し悪しで変わってくるでしょう。
物件も途中変更が難しい要素の一つで、契約後に物件を変える場合、新たな手間と費用が膨大にかかります。
内装や細かい備品を変えるのとはわけが違います。
せっかく投じた資金が無駄にならないよう、大きな費用が発生する前の準備を丁寧に行いましょう。

必要な消防設備を確認する

民泊は業態を問わず、消防設備の設置が義務づけられています。
宿泊客に部屋を貸し出す場合、それだけで消防法上は特定防火対象物の扱いになるからです。
火災報知器や消火器の設置で済むケースもあれば、建物全体に非常ベルの配備を求められる場合もあり、費用の見通しが立ちにくい部分と言えるでしょう。
施設管理者の常駐を想定していない場合、より厳格な基準を設けられる傾向があります。
工事の規模が大きくなると、費用が数百万円に膨らむ事態も考えられるため、物件の契約前に管轄の消防署に相談するのがおすすめです。
実際に費用が発生する前に、その全体像を正確に把握しましょう。

利用ルールを決める

民泊のスムーズな運営には、利用ルールの策定と確実な周知が肝心です。
規約と一緒にマニュアルとして各部屋へ配置するのも一つの方法ですが、宿泊客の全員がそれを読むとは限りません。
マニュアルの設置に加えて、客室や共有スペースなどの要所に見やすく掲示し、宿泊客に協力を仰ぎましょう。
ターゲット・コンセプトや立地によっては、訪日外国人観光客の利用も珍しくありません。
日本語に限らず英語や中国語など、多言語での表記を実践しましょう。
さらに表記の工夫に加えて、各国の習慣や常識を知識として蓄えておくと、より柔軟な対応ができます。
顧客満足度の向上にもつながりやすいので、開業準備や民泊運営の合間に調べてみてください。

公式サイトやSNSを活用する

公式サイトやSNSの活用も積極的に行いましょう。
仲介サイトはゲストの目に留まる機会を増やす点で優れてはいるものの、競合他社の情報も満載のため、自社の情報が埋もれやすいのが難点です。
一方で、公式サイトは掲載する情報やレイアウトの自由度が高く、SEO対策さえクリアできれば仲介サイト以上の集客も期待できます。
公式サイトからの予約を増やせれば、仲介サイトで発生する手数料が減り、間接的に収益の増加につながるでしょう。
またSNSは、コストをかけず手間も少なく集客を図れる民泊運営の心強い味方です。
完成したばかりのキレイな施設の写真を存分に活用し、民泊の周知に努めましょう。
ファンになってくれた宿泊客に投稿をお願いするのもおすすめです。
運営側では気付きにくい、新たな魅力が見つかるかもしれません。
民泊のハッシュタグを決めておけば、宿泊客とのコミュニケーションの機会も創出できます。
インターネットでの露出を増やし、民泊をさらに盛り上げましょう。

開業の流れや条件を理解して、安全・適正に民泊運営を始めよう

開業の流れや条件を理解して、安全・適正に民泊運営を始めよう

今回は、民泊を始めるには何が必要か解説しました。
選択する業態によって遵守するべき法律が変わり、運営のルールや申請の提出先にも違いが生まれます。
ルールを守らなかったり、申請すべきものが未提出だったりすれば、適正な運営とは言えません。
どれも「知らなかった」では済まされない重要事項です。
場合によっては、宿泊客の安全を脅かす結果を招いてしまいます。
民泊の経営に失敗しないように正しい知識を身につけて、開業の準備を進めましょう。

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