ホテルのキャンセル料の回収方法や無断キャンセル対策について解説
ホテルのキャンセル料の回収方法や無断キャンセル対策について解説

ホテルの運営では、キャンセル料の回収が大きな課題となっています。特に無断キャンセルでは回収に手間がかかるケースが多いので、なかなか着手できない場合も見られます。
そこで本記事では、キャンセル料回収の現状と課題を紹介するとともに効率的な解決策について解説します。キャンセル料の回収方法や無断キャンセル対策も紹介しますので、ぜひチェックしてください。
ホテル業界の無断キャンセルとキャンセル料回収の現状

ホテル業界では、多くのホテルが無断キャンセルに悩まされています。無断キャンセルは先払いなどでない限り回収に手間やコストがかかってしまうため、結局支払ってもらえないというケースが多い現状です。
ホテル業界が抱えるキャンセル料回収の課題
ホテル業界でキャンセル料を回収するための主な課題は、以下の通りです。
- キャンセル料が発生する予約の見逃し
- 請求しても支払ってもらえない
- キャンセル料を回収するためのシステムが整っていない
それぞれの課題について詳しく解説します。
キャンセル料が発生する予約の見逃し
ホテルでは従業員が日々膨大な数の予約を管理しているところもありますので、場合によってはキャンセル料が発生する予約を見逃してしまうケースがあります。キャンセル料が発生する予約を見逃してしまうと、ゲストに連絡できないままキャンセルの件がうやむやになってしまいがちなのです。
請求しても支払ってもらえない
キャンセル料が発生した予約に関してキャンセル料を請求しても、応じてもらえないケースもあります。キャンセル料を支払ってもらえないケースには、対応遅延によるゲストとのトラブル、部屋を使用していないので支払う義務はないというクレーム、請求自体の無視などが挙げられます。 特に理不尽なクレームや請求の無視に関しては、ゲストが頑として払おうとしないことから頭を抱えてしまうケースも少なくありません。
キャンセル料を回収するためのシステムが整っていない
ホテルによっては、キャンセル料を回収するためのシステムが整っていないところもあります。そのためキャンセルしたゲストに連絡が遅れてトラブルに発展するケースもあり、より回収が難しくなってしまうのです。 またシステムが整備されているところでも、キャンセル料回収のための確認作業に時間が割けなかったりほかの業務に支障が出てしまったりすることもありますので、なかなか回収がはかどらないのが現状です。
無断キャンセルに対してキャンセル料の請求はできる?

結論から申し上げますと、無断キャンセルに対してキャンセル料を請求することは可能です。なぜなら、ゲストがホテル予約の申込みをして、ホテル側が同意した時点で契約は成立したものと見なされますので、ゲストに宿泊料金の支払い義務が生じます。なんらかの事情があって宿泊できなかったとしても、契約自体は有効ですので支払い義務は消滅することはありません。
また当日のドタキャンがあった場合には、基本的にホテルは損害賠償を請求することも可能です。ただし、事前にキャンセル料に関する規定を明示しておく必要がある点に注意しましょう。
ただし、ゲストに以下のような事情があった場合は、ホテル側の配慮で請求を行わないケースもあります。
- 交通事故などの深刻なトラブルがあった
- 急病になった
- 身内に不幸があった
しかし、このようなケースに関しても請求するかどうかはホテル側が判断しますので、事情があるからといってキャンセル料支払いの義務が消えるわけではありません。
キャンセル料の回収が無効になる場合も
キャンセル料に関しては、回収自体が無効になってしまうケースもあります。なぜなら消費者庁は消費者保護の観点から、キャンセル料の規定を超えた超過分の料金に関しては請求が無効となることを定めているからです。そのため、キャンセル料が過度な金額である場合には無効になる場合が見られます。
ホテルのキャンセル料の回収方法

ホテルでキャンセル料を回収するためには、以下のような手順で行いましょう。
- ゲストへの連絡
- 請求書送付
- 少額訴訟
- キャンセル料回収サービスの導入もおすすめ
それぞれの回収方法について詳しく解説します。
ゲストへの連絡
キャンセル料が発生した場合には、まずゲストに連絡を取りましょう。予約時に登録してあるメールアドレスや電話番号に連絡して、キャンセル料の内訳や入金方法、入金期限などを提示します。予約サイトからの予約でも、回収作業は原則ホテルが行います。
ゲストへの連絡を行う場合には、キャンセルの理由も聞いておきましょう。不慮の事故など正当な理由がある場合には、事情を考慮してキャンセル料の請求を取り下げる選択肢も考えられます。
また連絡では電話とメールの両方で行うことをおすすめします。なぜなら、電話だけだと請求をした証拠が残りにくいため、電話をした後にメールを送って文面でやりとりを残しておくといいからです。
請求書送付
ゲストが請求に応じない場合には、請求書を送付しましょう。予約時に住所が登録されている場合は、その住所宛に請求書を送付してください。
この場合には、内容証明で送るといいでしょう。内容証明ならば、ゲストにプレッシャーをかけられますので、支払ってくれる場合もあります。また裁判になった場合でも、証拠となる点も便利です。
少額訴訟
請求書の送付を行っても支払いに応じてもらえない場合には、少額訴訟を起こして裁判に進めることもできます。キャンセル料金を事前に定めていれば、裁判で勝てる可能性は高いです。
訴訟を起こして裁判を行うには費用や時間がかかるため、現実的な方法とはいい難いです。しかし、悪質なキャンセルや団体旅行の無断キャンセルの場合は損失も大きくなり、再発防止を防ぐために訴訟を検討してもいいでしょう。
この場合には、宿泊料金の消滅時効に注意する必要があります。2020年に法改正が行われて、宿泊料金の消滅時効は5年となりました。そのため時効の期限が過ぎてしまうと、損害賠償請求ができなくなってしまいますので、できる限り早い対応が重要です。
キャンセル料回収サービスの導入もおすすめ
ホテルは数多くの業務があることから、効率的にキャンセル対応をするためにキャンセル料回収サービスを導入する方法がおすすめです。キャンセル料回収サービスならば、基本的にその業務を一任できるメリットがあります。
またキャンセル料発生の請求業務に関してさまざまな過程を自動化することもが可能であり、請求書作成やゲストへのメッセージ送信、請求リマインドなど一連の業務を行ってくれます。業者によってサービス内容が異なりますので、自社に合った業者を選ぶようにしましょう。
無断キャンセルを防ぐための対策

無断キャンセルを防ぐためには、以下のような対策が重要です。
- キャンセルポリシーの明示
- ゲストの連絡先(電話番号やメールアドレス、住所など)の記録
- 予約リマインドメールの送信
- 事前決済やデポジット制度の導入
それぞれの対策について詳しく解説します。
キャンセルポリシーの明示
まず部屋の予約の募集を行う前に、キャンセルポリシーを明示しておくことが重要です。キャンセルに関する規定を定めておけば、キャンセルが起こった場合にも早急に対応できます。 キャンセルポリシーには、具体的に以下のような項目を明示しておきましょう。
- キャンセル可能期間
- キャンセル料
- 緊急事態発生時の対応について
またキャンセルポリシーは分かりやすい位置に掲載しとき、インターネット決済の場合は「キャンセル規定に同意する」などのボタンを作っておきましょう。ボタンチェック項目があれば、申込みをした時点でキャンセル規定に同意したことになります。
さらにキャンセル料に関しては、キャンセルをする時期に応じて変わるようにしておくといいでしょう。基本的には、以下のような設定が目安となります。
- 8日前まで:無料
- 7~4日前まで:宿泊料の20%
- 3日前まで:宿泊料の50%
- 2日前まで:宿泊料の80%
- 当日:宿泊料の100%
ゲストの連絡先(電話番号やメールアドレス、住所など)の記録
予約が入ったら、ゲストの連絡先を記録しておきましょう。情報を細かく控えておけば、無断キャンセルが起こった場合にも連絡が取りやすくなります。
ゲストの連絡先には電話番号やメールアドレスだけでなく、住所などの記録をとっておくことも重要です。住所を控えておけば未払いの場合にオンラインで連絡が取れなくても、請求書を送付して支払いを請求できます。
予約リマインドメールの送信
予約が成立したら、予約日の前にリマインドメールを送りましょう。「あまり利用する気はないが、とりあえず予約してみた」というような方も見られますので、無断キャンセルをするつもりはなかったが予約したこと自体を忘れているというケースもあります。
このように予約を忘れているパターンでのキャンセルを防ぐためには、リマインドメールは有効です。事前にメールで予約の確認が届けば、利用者も申込みをしたことを思い出すはずでしょう。
またリマインドメールは宿泊日の数日前と前日、複数回に分けて送りましょう。さらに宿泊の意思について確認しておき、予約をキャンセルする予定の場合には早めに対応してくれることが期待できます。
なお、リマインドメールにもキャンセルポリシーを記載しておき、キャンセル料が発生する可能性があることを伝えておきましょう。
事前決済やデポジット制度の導入
キャンセル料の未払いを防ぐためには、事前決済やデポジット制度を導入する方法もおすすめです。宿泊予約をした段階で決済をする前払い制度ならば料金の支払いが済んでいるので、無断キャンセルがあったとしても、ホテルに損失はありません。
またデポジット制度とは預り金制度であり、チェックイン時に一定額を担保として支払ってもらって宿泊後に返金する仕組みとなっています。この制度では、予約時に宿泊料金の一部を事前入金するシステムが一般的です。デポジット制度も事前に料金を支払ってもらっているため、無断キャンセルがあったとしてもホテル側の損失が少なく済みます。
日ごろから対策を練って無断キャンセルによる損害を抑えよう

無断キャンセルを防ぐためには、事前に対策を講じておくことが重要です。特にキャンセルポリシーがポイントであり、事前に明示しておけば無断キャンセルがあった場合の裁判などで有利になります。
キャンセル料未回収のリスクは、予約を受ける際にキャンセルポリシーをゲストに伝えておき、リマインドすることによって軽減できます。もしキャンセル料が発生して回収作業を行う場合には、弁護士への依頼やキャンセル料の請求・回収を自動化する専用サービスの利用をおすすめします。
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