ホテル経営に活用すべきゲストデータ|情報収集のポイントやセキュリティ対策について解説

ホテル経営に活用すべきゲストデータ|
情報収集のポイントやセキュリティ対策について解説

ホテル運営の中で、日々さまざまなデータが更新されています。中でもゲスト情報は、ニーズや傾向を把握して営業戦略に活かせる貴重なデータです。
収集したゲスト情報をデータ化し、分析して次のアクションにつなげるデータ主導の意思決定は、シンプルながらも経営において重要で確実なステップです。
この記事では、効率的にデータを収集するためのポイントや、収集したデータを安全に管理するためのセキュリティ対策について解説します。

ホテルで取り扱うゲストデータの種類

ホテル運営において重要なゲスト情報ですが、具体的にどのようゲスト情報がデータとして価値があるのか、具体例を挙げて解説します。

基本情報

ゲストの属性に関する情報です。
氏名や住所、年齢、電話番号、メールアドレスなどが含まれます。特に連絡先は、連絡の可否とゲストが希望する連絡手段も併せて登録しておきましょう。
また、ゲストのステータスも基本情報です。中には、利用回数や利用金額などによってゲストをランク分けしている宿泊施設もあります。ステータス別のタッチポイントを設定するなど接客に大きく関わる項目のため、必ずデータ管理しておきましょう。

利用実績

利用実績とは、過去に利用した回数、利用日、利用プラン、日数、人数、客室タイプ、料金、食事の有無などの履歴情報です。
また、予約経路も重要な情報です。もしOTA経由での予約であれば、次回は公式サイト経由で予約してもらえるよう誘導施策を実行したり、公式サイト経由の場合は、次回利用のための販促活動を行ったりすることもできます。

趣味・嗜好

ゲストの趣味や嗜好を把握しておくと、コミュニケーションを取るきっかけになります。
利用目的、客室タイプ、食事の嗜好、リクエストの内容などを記録することで、ほかのスタッフに情報共有できます。例えば、チェックインの際にゲストの好みのトピックをさりげなく入れて会話すると、心をつかむきっかけになるかもしれません。
また、データを分析し、ペルソナに近い人たちの集客ができているか確認したり、嗜好の傾向をみつけて新たな予約プランを立案したりと、キャンペーンの展開に役立てることもできるでしょう。

行動データ

行動データとは、予約からチェックアウトまでの間にゲストが取った行動に関する情報を集めたものです。
ホテルまでの交通手段、レストランやフィットネスなど宿泊以外の施設利用状況、サービス利用状況、決済手段などが行動データに当たります。また、いつ予約されたかも重要なデータです。
行動データを分析することで、ゲストのニーズやパターンを知ることができます。さらに、ベストなタイミングで効果的なアプローチを行うことで、機会損失を減らし、リピーターや新規ゲストの獲得につなげられる可能性もあります。また、ゲスト満足度の向上を目指した施策を考えることも可能です。

このように、ゲスト情報はホテルにとって重要な資産であるといえます。「基本情報」、「利用実績」、「趣味・嗜好」、「行動データ」は、それぞれに価値があります。
さらにそれらを可視化し組み合わせることで根拠のある仮説を立てることができ、積極的なマーケティング戦略に活用できるでしょう。

ホテルのゲストデータの収集方法

ホテルのゲストデータの収集方法

ゲストデータを的確に収集するには目的を明確にしておくとよいでしょう。目的が明確になることで、収集すべき項目が特定でき、どのタイミングで取得すればよいか把握できます。事前に計画しておくと、日々のオペレーションに組み込むことができるので、効率よくデータ収集できるでしょう。
続いて、ゲスト情報の収集が可能なタイミングと収集方法を具体的に紹介します。

チェックイン時のレジカード入力

チェックイン時に、レジカードにゲストの個人情報を記入してもらうことで、基本情報を得ることができます。宿泊者の名簿を備えることは、旅館業法第六条でその義務が明記されているため、必ず実施しなければなりません。
記入項目に、ゲストの基本情報のほか収集したい事項を含めておくと、特別な労力をかけずに情報を集めることができます。タブレット型や非接触型のチェックイン時も同様です。
ここで重要なポイントは、もし手書きのレジカードを用意している場合、その情報を所定のファイルなどに入力してデータ化することです。資料として使えるデータにするため、入力を失念しないようにルールとして共有しておきましょう。

アンケート回答

アンケートを実施することも、ゲストの声を直接聞くための良い方法です。ゲストの満足度や希望などを把握し、改善点や新たなサービスを講じるための道筋になるでしょう。フリーコメントを書けるようにすると、さらに幅広い情報を得られる可能性があります。
アンケートを実施する際にも目的の明確化は必須です。満足度を図るための調査なのか、ニーズを把握するための調査なのかを明確にする必要があります。目的によって質問内容が異なるため、せっかく得られる回答を有意義なものにするために、事前にしっかりと打ち合わせをしましょう。
アンケートの実施において、しばしば課題となるのが回答率の向上です。まずは、アンケートを実施していることを広く認知してもらわなければなりません。パブリックスペースやフロントなどで伝えられる工夫をしましょう。 次に、回答のしやすさも大切です。スマートフォンで読み込むWebアンケートなら、時間や場所を問わず回答が可能なうえ、使い慣れた端末を使うため、ゲストもスムーズに回答できます。
さらに、謝礼を用意することも回答率の向上に効果的です。回答者に割引クーポンや特典を進呈するなど、回答するメリットを感じてもらえると協力してもらいやすくなるでしょう。

アンケートとは異なりますが、GoogleマップなどWeb上の口コミをリサーチしてみるのも、ゲストの生の意見を入手できる方法の一つです。

デジタルデータの活用

もし、ホテルにPMSを導入している場合は、システム内に蓄積されたデータを活用することができるでしょう。表やグラフに可視化された分析用データを簡単に取り出すことができるので、貴重なデータをすぐにでも使うことができます。
また、Googleが無償提供しているGoogle Analytics 4(以下、GA4)という分析ツールを使えば、流入チャネルや予約への行動パターンを把握することも可能です。GA4ではWeb上の細かな行動データを収集し、必要な項目を設定してレポートとして数値化することができます。
例えば、公式サイトに流入する直前に見ていたWebサイトの特定や、予約完了に至るまでにどのページを閲覧して、何分何秒滞在したのかを把握できます。また、季節ごとにアクセスが増えた地域をランキング形式で表示することも可能です。細かな行動データを分析できると、綿密なマーケティング戦略が立てられるでしょう。GA4から得た行動データには、公式サイトのほかOTAサイトにも応用して対策を打ち出すヒントが豊富に蓄えられています。

会員プログラムの運営

会員プログラムの運営には、ゲスト情報の収集と管理を伴います。
ゲストの囲い込み施策として、会員プログラムを用意しているホテルが増えています。会員プログラムへの登録時に、氏名や住所、メールアドレスなどの基本情報を入力してもらったり、予約情報をそのまま流用できたりするので、効率的な情報収集が可能です。さらに、家族構成や記念日なども登録項目に含めると、パーソナライズしたアプローチが実現できます。
特別な日である「記念日」と、非日常を味わえる「ホテル」は相性が良いものです。
会員登録に同意するということは、これからもホテルを利用したいという意思があると考えられます。そのような好意的な印象を抱いてくれるゲストに対しては、積極的なコミュニケーションを継続的に行うことで、親密性を高めることができるでしょう。

会員プログラムの運営は、PMSに組み込まれた会員機能を使うと始めやすいでしょう。会員は、Web上でマイページを確認できる仕組みになっている場合が多いです。
また、LINEの会員機能を使ったり、オリジナルアプリをリリースしたりするホテルも増えてきました。最近はスマートフォンを使い慣れている人が大半のため、画面操作への抵抗は心配ありません。プッシュ通知で最新の案内を配信できることも効果的です。

ゲストデータを活用してリピーターを獲得する方法

ゲストデータを活用してリピーターを獲得する方法

ここからは、収集したゲストデータを活用してリピーターを獲得する方法をお伝えします。
収集したゲスト情報は事実の集合体です。データとして分析し活用することで、ニーズや課題、行動パターン、属性の傾向などが見えてくるでしょう。これらを資料にすると、推測や勘といった曖昧なものではなく、事実をもとにした根拠のある戦略を立てることができるのです。

ゲストデータを活用した施策例を紹介します。

  • セグメント別の予約プランの販売や案内の送信
  • セグメント別、ステータス別のタッチポイントを設定
  • ステータスによるサービスや特典を設定
  • 利用履歴に基づく客室や寝具を用意
  • 利用履歴に基づく予約プランの提案
  • 嗜好に合わせた食事の提案
  • 記念日に合わせた販促や対応
  • 行動パターンに基づくサービスの提案や特典を設定
  • 行動パターンに基づくオペレーションや施設の改善
  • 新商品や新サービスの開発

セグメント別の予約プランを用意したり、ニーズに合わせてパーソナライズした案内を配信したりすると、よりターゲットに刺さる販促ができるため予約の可能性が高まります。 さらに、ゲストデータは接客時にも活用できます。例えば、ステータス別のタッチポイントを設定し、マニュアル化して実践することでゲストの満足度が上がり、ホテルのファンを育てることにつながるでしょう。チェックイン時の会話に、前回利用時のエピソードを入れるなどのささいな心遣いも、ゲストにとってはうれしいものです。
情報を数値化すると、パターンが出現することがあります。例を挙げると、毎年ある時期になると特定の属性のユーザーが増える、などです。こういった発見をもとに、確実にリピート利用してもらえるような施策案を検討することもできます。
ゲストの行動には、気持ちを洞察するヒントがあります。ゲストが感じたことを捉えられれば、隠れていたニーズを考慮した魅力のある提案ができるでしょう。
また、口コミは課題の発見にもつながります。サービスやオペレーションの改善点に気付くことは、ゲスト満足度向上への糸口です。

継続的な利用が増えると、高い稼働率を見込むことができ、経営の土台になります。盤石な経営の土台を築ければ、経営資源にゆとりが生まれ、安定した利益を確保しやすくなるでしょう。

ホテルが注意すべきゲストデータの取扱いとセキュリティ対策

ホテルが注意すべきゲストデータの取扱いとセキュリティ対策

ゲストデータには個人情報が含まれるため、慎重に取り扱わなければなりません。万一、データが流出した場合、ゲストに損害を与えるだけでなく、ホテルの信頼を失うことになります。そのため、セキュリティ対策を強化することは不可欠です。以下のような環境が整っているか、ぜひ確認してください。

  • 個人情報保護法の理解と遵守
  • プライバシーポリシーの明確化
  • 導入システムやサービスの脆弱性対策(データの暗号化、アクセス権限の設定)
  • セキュリティ対策ソフトの導入
  • 社内研修(セキュリティの重要性の理解、対応訓練)

セキュリティ対策を万全なものにするには、外部対策と内部対策を同時に行うことが重要です。技術的な対策を講じて外部からの要因に備えることはもちろんのこと、内部のリスクマネジメントも欠かせません。スタッフ全員がセキュリティについて理解するための教育の場を設け、コンプライアンスを徹底しましょう。

ホテル戦略のカギを握るゲストデータの収集と活用

ホテルを運営していると、オペレーションの中で自然と大量のデータが蓄積されていきます。それらの情報は、使いやすいように整理することが大切です。データ化することにより、分析やマーケティング戦略に活用できるようになります。
まずは、すでに入手しているデータを把握しましょう。そのうえで、さらに目的を明確にし、追加したいデータと収集方法を検討するのがおすすめです。
ホテル戦略のカギを握るゲストデータをうまく活用して、ホテル経営の成功に役立てましょう。

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